営業組織科学総合研究所 Institute for Sales Organization Science

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リードの7割は、営業に接触されないまま消えていた 〜量でも管理でもなく、追客と結びついていた「リード選定の質」〜

営業担当者は、マーケティング起点のリードにどの程度の時間を配分するのか。その割合が事前選別への信頼や追跡管理、リードの量、経験や実績によってどのように変動するかを、B2B企業4社の営業担当者461名に対する調査に基づいて検証した研究の知見があります。本稿では、同研究が示した時間配分の構造を読み解きながら、リードの供給量を増やす前に確認すべき条件を解説します。

要旨

  • B2B企業4社の営業担当者461名を対象として、月の労働時間の配分を調査したところ、マーケティングリードの追客に充てられる時間の割合は、平均で月の5.7%にとどまりました。この割合と正の関係が認められたのは、リードの量でも上司による追跡管理でもなく、マーケティングの事前選別に対する営業担当者の信頼です。追跡管理の強さは、全体平均では追客に充てられた時間の割合と負の関係にありました。追客を増やすうえで、リードの量を増やす前にまず確認すべきは、選別への信頼ということになります。

はじめに

マーケティング担当者が獲得したリードを営業へ引き渡し、営業担当者が追客する。この分業は、ザ・モデル型の組織が広がった日本でも日常の光景になりました。ただ、渡したリードがどの程度追われているかを測定している企業は多くありません。米調査会社による業界推計では、マーケティングが生んだリードのおよそ7割に、営業が一度も接触していないとされています(※1)。

この消えたリードの帰趨を、営業担当者の時間配分から追跡したのが、米マサチューセッツ工科大学やペンシルベニア州立大学などの研究チームが『Journal of Marketing』に発表した研究です(Sabnis et al., 2013)。研究チームは、科学機器・化学・複写機・コンピュータのB2B企業4社に勤務する営業担当者461名に、月の労働時間の内訳を尋ねました。マーケティング経由のリードの追客、自分で開拓したリードの追客、そして既存顧客の対応や事務などそれ以外の業務。この三つの割合が何によって規定されるのかを分析しています。

図1 営業の追客時間の配分を左右する要因
出典:Sabnis et al.(2013), Figure 2をもとに作成

月の時間のわずか5.7%という追客の実態

配分の平均は、マーケティングリードの追客が月の5.7%(※2)、自己開拓リードの追客が15.6%、残りの78.8%が既存顧客対応や事務などの業務でした。新規顧客の獲得に充てることのできる時間そのものが月の2割ほどしかなく、その2割の中で、マーケティングのリードは営業担当者自身が開拓したリードと時間を奪い合っています。

図2 営業の月間労働時間の配分(※3)

つまり、リードが追われない背景には、リードの質だけでなく、限られた時間をどの仕事に配分するかという構造があります。マーケティングリードの追客に時間を充てるには、既存顧客への対応や自己開拓のリードの追客に充てる時間を削減しなければならないからです。実際、成績の高い営業担当者ほど、マーケティングリードに充てる時間の割合が小さく、自己開拓のリードへの配分が大きくなっていました。経験年数の長い営業担当者にも、自己開拓のリードへの配分が大きい傾向が認められています。

量を増やしても、管理を強めても動かない時間

企業が打ち手として採用しがちな変数として、リードの量、追跡管理の強さの二つがあります。しかし、そのどちらも期待どおりに働いていませんでした。

まず、リードの量と、追客に使う時間の割合の間に、有意な関係は確認されていません。そして、追跡管理の強さは、全体平均では追客時間の割合と負の関係を示しました。この負の関係は、経験年数の長い営業担当者と、前年の達成率が高い営業担当者で、特に強く表れています。

原研究はこの結果を、成果に応じて報酬が決まる営業担当者にとって行動の監視は動機づけになりにくく、営業の反発を招いた可能性があると解釈しています(ただし、反発そのものを測定した調査ではありません)。一方で、経験の浅い層には管理が有効に働く可能性も示唆されています。

表1 追客時間の割合と各要因の関係(弾力性、※4)

追客時間と結びついていた、選別への信頼

追客時間の割合と明確な正の関係が認められたのは、マーケティングの事前選別に対する営業担当者の信頼でした。選別の質への評価が1%高い営業担当者では、マーケティングリードに充てる時間の割合が平均1.12%高いという関係が確認されました。この関係は、経験年数の長い営業担当者ほど強く表れています。管理への反応が最も鈍い層が、選別の質には最も強く反応するという構図です。

調査時点では、自社の選別の質に対する営業担当者の評価は、7点満点で平均2.87でした。この結果は、選別プロセスの見直しが、追客時間を増加させるための有力な検討対象であることを示唆しています。

マーケティングリードを増やす前に確かめる条件

原研究から導かれるのは、リードの受け渡しを増やす前に確かめるべき条件が二つある、ということです。ひとつは、営業担当者が選別を信頼しているかどうか。信頼の水準は、簡単な匿名調査で測定できます。もうひとつは、追客に充てられる時間が残っているかどうか。労働時間の8割近くが既存顧客対応や事務などで占められた構造を放置したまま供給量を増やせば、追われないリードが積み上がるおそれがあります。あわせて、追跡管理の強化を既定の打ち手にすることについても、少なくともベテランと高実績層に対しては見直すべき理由があります。

なお、原研究は、2013年に公表された、B2B企業4社の顧客担当営業を対象とする自己申告調査です。マーケティングオートメーションやインサイドセールスを前提とする現在の分業体制を直接検証した研究ではありません。追客の裁量が営業担当者個人にない日本のザ・モデル型組織に、同じ数字をそのまま当てはめることもできません。ただし、引き渡す量よりも、選別への信頼のほうが追客時間と強く結びつくという仮説は、日本の営業組織でも検証に値します。

おわりに

リードの7割が追われることなく消失するという現象は、営業の怠慢としても、リードの質の問題としても語られてきました。原研究が示したのは、その手前にある構造です。追客に充てられる時間はもともと乏しく、その配分を増加方向に結びつけていたのは、リード量や追跡管理ではなく、選別への信頼でした。

最初の一歩は、自社の営業担当者に二つの数字を確認することです。マーケティングのリードに月の何%の時間を充てているか。そして、選別をどの程度信頼しているか。同じ質問項目と7点という尺度を用いる場合、原研究の平均2.87はひとつの参考値になります(ただし、調査時期や営業体制が異なるため、単純な優劣の比較に用いることができない点には留意が必要です)。

注記
※1 約7割という数字は、原研究が引用する米調査会社(Gartner、Aberdeen Group)の推計であり、原研究自身が計測した値ではありません。原研究は、リード量が多すぎて追いきれない場合も含むため、この数字は営業側だけでなくマーケティング側の問題も反映していると注記しています。
※2 調査には562名が回答し、欠損値などを除いた有効回答は500名でした。このうち、マーケティングリードへの追客時間をゼロと回答した39名は分析から除外されています。そのため、本文に示した5.7%は、追客時間がゼロであった営業担当者を含まない461名の平均値です。
※3 図1は、原研究が報告した461名の時間配分の平均値(マーケティングリード5.7%、自己開拓リード15.6%、それ以外78.8%)をもとに作成しています。
※4 表1は、原研究が算出した弾力性(各要因が1%変化したとき、追客時間の割合が何%変化するか)の全社平均です。値は企業によって幅があり、追跡管理とリード量はいずれも4社中2社ではプラスでした。

本稿は、以下の研究をもとに構成しています。
Gaurav Sabnis, et al.(2013) ‘The Sales Lead Black Hole: On Sales Reps’ Follow-Up of Marketing Leads’, Journal of Marketing, Vol.77, No.1, pp.52–67.

※本レポートの内容を引用・転載される場合は、出典として「営業組織科学総合研究所」を明記してください。

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