導入の背景
「生活者発想」の企業が直面した、採用効率化のジレンマ
博報堂DYグループの「デジタルコア」として、デジタルマーケティングを牽引する株式会社Hakuhodo DY ONE。同社は、数千名規模の応募が集まる企業でありながら、採用活動においては「効率化」と「候補者への誠実な向き合い」のバランスに悩んでいた。
これまで導入していた「録画面接」では、学生が投稿した約10分間の自己PR動画を、社員2名体制で全て目視確認していた。
宇野氏:「学生1人の合否を決めるのに、動画視聴を含めて20分はかかります。インターンだけで500人、本選考を含めるとさらに増える。単純計算でも年間500時間近くを動画チェックに費やしていました」
さらに深刻だったのは「離脱率」の高さだ。「動画を撮って送る」という心理的・物理的ハードルにより、応募の意思はあるものの、約25%の学生が選考を辞退していたのだ。
布山氏:「効率化はしたい。でも、我々は『生活者発想』を掲げるなかで、人を大切にしたい。AIに面接を任せることで、当社の企業イメージが損なわれるのではないか?そんな葛藤が社内にはありました」

導入の決め手
決め手は「人を感じる温かみ」
そんな中、出会ったのがPeopleXのAI面接だった。複数のAI面接サービスを比較検討する中で、同社が最も重視したのは「人間らしさ」が感じられる候補者体験の良さだった。
布山氏:「他社のサービスも拝見しましたが、静止画だったり、無機質なものが多かった。しかし、PeopleXのAI面接はアバターを活用し、一定の対話感が確保されていました。さらに、固定化された質問だけでなく、学生の回答に応じて深掘り質問を柔軟に投げかけてくれる点に大きなバリエーションを感じ、それが導入の決め手となりました。」
デジタルネイティブであるZ世代の学生にとって、ゲームやVRのアバターは馴染み深い存在だ。むしろ、無機質なシステムよりも、アバターが相手をしてくれる方が緊張せずに素を出せるのではないか。そんな仮説のもと、PeopleX AI面接の導入と面接官のハイブリッド評価で透明性を確保しながら、最終決定は人がおこなう仕組みを担保した採用プロセスの高度化を図ることを決断された。
導入後の効果
選考工数を400時間削減。離脱率は驚異の10%以下へ
導入の効果は、予想を遥かに上回るものだった。
まず、最大の課題だった工数は劇的に削減された。
宇野氏:「これまでの500時間が、AIによるスクリーニングと確認作業だけになり、おそらく50〜100時間程度に収まっています。約400時間の削減です。」

そして、懸念されていた学生の反応も好意的だった。24時間365日、スマホさえあればいつでも受験できる手軽さは、多忙な就活生にとって大きなメリットとなった。
宇野氏:「録画面接時代に25%あった離脱率は、AI面接導入後、10%以下にまで下がりました。受けている時間をデータで見ると土日や深夜に受験している学生も多く、機会損失を確実に防げていると実感しています」
今後の展望
テクノロジーと人間味が融合した、次世代の採用活動を追求
AI面接の導入は、効率化だけでなく「公平性」という新たな価値も生み出した。
布山氏:「学生に対しては『AIだからこそ、面接官の当たり外れやバイアスがなく、全員同じ基準で公平に見てもらえる』と説明しています。これが非常にポジティブに受け入れられました。AIでフラットに評価し、その後の選考で社員がじっくりと人物面を見る。この役割分担が上手く機能しています」
将来的には、AIの評価スコアと適性検査の結果など蓄積されたデータを活用し、入社後の活躍予測や、業界平均と比較したフィードバックなど、AIならではの機能を拡張していく構想も検討していきたいという。
布山氏:「AI面接は、単なる効率化ツールではありません。学生にとっても、企業にとっても、より納得感のある幸せなマッチングを実現するためのパートナーです。今後はこのモデルを、中途採用や他の領域にも広げていきたいですね」
株式会社Hakuhodo DY ONEの挑戦は、テクノロジーと人間味が融合した、次世代の採用活動のあり方を提示している。
導入の背景
「日程が合わない」だけで応募を逃していた。多忙な専門職に立ちはだかる選考の壁
「日本にベビーシッターの文化を」。そんなビジョンを掲げ、24時間スマホで呼べるシッターサービスを展開する株式会社キッズライン。全国で250万件以上の依頼実績を誇る同社ですが、サービスの担い手である「サポーター(シッター)」の採用プロセスには、構造的な課題がありました。
同社でサポーター採用を担当するご担当者様は、当時の状況をこう振り返ります。

平島氏:「現役の保育士さんや看護師さんは日中フルタイムで働いている方が多く、参加できるのがどうしても土日に限られてしまいます。しかし、土日の登録会も月に2、3回しか開催できず、すぐに枠が埋まってしまう。今月は満席なので来月となると、モチベーションが下がって応募自体を諦めてしまう方もいらっしゃいました。」
人気の高い登録会はすぐに満席になり、次の開催まで1ヶ月待たなければならないことも。「ベビーシッター採用のリードタイムは自治体への届出も含めて、1ヶ月から2ヶ月ほどかかってしまう」という状況下で、日程調整のハードルによる機会損失を防ぐことは急務でした。
導入の決め手
「これなら話せる」と確信させた、AIアバターの人間味ある対話力
課題解決の手段として「AI面接」の導入検討を始めた同社。しかし、対人スキルが何より重要な保育職の採用において、「AI面接」という言葉が応募者のハードルになるのではないかという懸念もありました。
3社ほど比較検討を行う中で、その懸念を払拭し、導入の決め手となったのはPeopleXのAIアバターの圧倒的な質の高さでした。

平島氏:「他社さんのサービスでは、画面上にアバターがいても『質問に対して回答する様子を録画しているだけ』という無機質な感覚が拭えませんでした。でも、御社のサービスは違いました。瞬きや頷きが自然に入り、本当に会話しているような感覚があったんです。『これなら話せる』と確信しました」
人柄やコミュニケーション力を重視する同社にとって、応募者が違和感なく話せることは必須条件でした。
平島氏: 「ベビーシッターはお子様や保護者様に寄り添う姿勢が非常に重要なので、面接でも本来そういった安心して話せる心のこもった会話を感じていただくべきだと考えています。それがAI面接という形であっても、一番私たちの思いを体現できるのが御社のサービスだったんです」
無機質な録画ではなく、人間味のある「対話」ができる点こそが、同社の求める採用体験と合致したのです。
導入後の効果
選考リードタイムを1ヶ月短縮。「待たせない選考」がもたらした成果
導入は慎重に進められた。まずはZoom説明会中にAI面接を受けてもらうハイブリッド形式からスタートし、運用を確認した上で、応募者が好きな時間に受検できる「24時間選考」へと移行した。効果はすぐに数字として表れた。
平島氏:「これまで1ヶ月先の登録会を予約していた方が、AI面接導入後はその場ですぐに一次選考に進むことができるようになりました。応募から一次選考までのリードタイムが単純計算で1ヶ月短縮されています」。
日程調整の必要がなくなり、応募者の熱量が高いうちに選考を進められるようになったことで、機会損失も減少。Webサイト上に「24時間いつでも選考可能」という導線を設置したところ、週末だけで30件以上の予約が入るなど、多くの応募者がAI面接を選択しています。
また、懸念していた受検者の反応もポジティブでした。
平島氏:「動画を確認すると、最初は緊張していても、AI面接官が相槌を打ってくれるおかげで、後半になると表情が柔らかくなっている方が多いんです。『意外と話しやすかった』という声もいただいています」
システム操作に不安を感じる方でも問題なく受検できており、AI面接はむしろ、応募者の心理的な負担を下げ、本来の魅力を引き出すことに貢献しています。
今後の展望
評価データの蓄積で「自社らしい採用基準」を確立したい
今後は、蓄積されたデータを活用し、採用精度のさらなる向上を目指しています。
「総合評価スコアが70点以上の人は、実際の印象も安定している」といった傾向も見え始めており、今後はこのデータを分析して「キッズラインで活躍できる人物像」の基準を明確にしていく予定です。
また、この成功モデルを、家事代行サービス(家事代行サポーター)の採用など、他の領域にも展開していくことを視野に入れています。
平島氏: 「保育業界はまだアナログな部分が多いですが、弊社ではテクノロジー活用を積極的に進めています。今回のAI面接導入も、単なる効率化ではありません。『テクノロジーで新しい価値を生み出す』という当社の姿勢を体現する事例として、これからも発信していきたいと考えています」
人の温かみとテクノロジーの利便性。その両立に挑むキッズラインの取り組みは、保育業界の新しいスタンダードを作っていく。