2025.06.13
ポテンシャル採用とは?対象年齢やメリット・デメリット、成功のコツを解説

即戦力人材の採用が難しくなる中、未経験者の中から将来のコア人材確保を目指す「ポテンシャル採用」に注目が集まっています。しかし、準備が不十分な状態で採用活動を始めると、ミスマッチや早期退職につながりかねません。
この記事では、新卒採用や中途採用との違いを整理したうえで、ポテンシャル採用を成功に導くためのポイントを具体的に解説します。
ポテンシャル採用とは
ポテンシャル採用とは、すでに身に付けているスキルや経験ではなく、潜在的な能力に着目して採用する手法です。即戦力ではなく、将来的にコア人材として活躍できる人材の獲得を目指します。
ポテンシャル採用のターゲットとなる年齢層や、ほかの採用方法との違いを解説します。
ポテンシャル採用の対象年齢
ポテンシャル採用の目的は将来的に活躍してくれる人材の確保であるため、20~30代前半を目安に採用している企業が多い傾向にあります。
ただし企業によって求める人材像は異なるため、40代以上を採用対象としてはいけないということはありません。求める人材像とマッチすれば、幅広い年齢層を採用対象とできます。
なお年齢で採用を制限することは原則として認められません。単にポテンシャル採用だからという理由で採用対象年齢を制限すると、違法行為に該当するので注意しましょう。
ポテンシャル採用と中途採用(キャリア採用)、新卒採用との違い
中途採用とポテンシャル採用の大きな違いは、採用の目的にあります。中途採用の目的は即戦力となる人材の確保ですが、ポテンシャル採用の目的は将来の活躍を見込める人材の採用です。
一方、新卒採用とポテンシャル採用の違いは、採用対象となる年齢層です。新卒採用は採用年度に卒業見込みの学生がターゲットですが、ポテンシャル採用は、新卒予定の学生に加えて第二新卒や、さらに上の年齢層まで幅広く対象としています。
ポテンシャル採用 | 中途採用 | 新卒採用 | |
目的 | 将来のコア人材の採用 | 即戦力採用 | 企業によって異なる |
重視される条件 | 人柄、考え方、行動特性など | 募集ポジションで必要な経験、スキル | 企業によって異なる |
採用ターゲットの年齢層 | 新卒、第二新卒~30代前後 | 募集ポジションによる | 新卒予定学生のみ |
採用時期 | 通年・随時 | 随時 | 定期(年1回) |
ポテンシャル採用が注目されている理由
ポテンシャル採用が注目されている理由は、採用難易度の上昇とそれに伴う企業の採用方針の変更です。
少子高齢化の進展により、人材不足は業種や職種を問わずあらゆる企業にとって採用課題となっています。15~64歳の生産年齢人口は過去30年間にわたって減り続けている状況で、中途採用市場の人材獲得競争が激化しています。
こうした状況を受け、未経験者も採用対象に含める方向へ方針を転換する企業も増えてきました。給与や待遇を上積みして無理に即戦力人材を確保するよりも、育成を前提とした長期的な人材戦略としてポテンシャル採用が選ばれています。
参照:総務省|人口推計(2024年(令和6年)10月1日現在)
ポテンシャル採用のメリット
ポテンシャル採用には、新卒採用とも中途採用とも異なるメリットがあります。主なものは以下の3つです。
- 多くの応募者から選ぶことができる
- 自社の文化になじみやすい
- 新しい視点を取り入れられる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
多くの応募者から選ぶことができる
ポテンシャル採用は未経験者も採用対象なので、経験者のみを対象とするよりもターゲット層が広範です。また未経験でも採用の可能性があるため、求職者の応募ハードルが下がり、応募が集まりやすくなります。
その結果、選考の母集団が大きくなり、多くの応募者から自社に合った人材を探すことが可能です。これまで採用対象外としていた層からの応募も期待できるため、より多様なバックグラウンドを持つ応募者を集められます。
自社の文化になじみやすい
ポテンシャル採用では20代・30代の若い人材を対象とすることが多く、社会人経験が浅い場合も少なくありません。前の職場の文化に染まり切っていないため、自社の文化に順応しやすいことはメリットといえるでしょう。
また業界や業種を経験していないことも多いため、同業他社のやり方にこだわらず、自社の方針や業務の進め方に柔軟に対応できます。
こうした職場への適応やカルチャーへの共感は、モチベーションの維持や定着率に大きく影響します。その結果、早期離職を防ぎ、将来の事業の中核を担う人材としての成長と活躍が期待できるでしょう。
新しい視点を取り入れられる
ポテンシャル採用では潜在能力や意欲を重視するため、多様な人材が集まりやすく、新しいアイデアの創出や業務の改善点の発見が期待できます。
中途採用では、同業他社などからの転職が多く、採用人材の属性や考え方が均質化しがちです。一方、ポテンシャル採用では業界や業種未経験者を採用することが多いため、これまでとは異なる視点を社内に取り入れることができるでしょう。内部にいると気づかない市場ニーズやイノベーションのヒントを発見できる可能性もあります。
ポテンシャル採用のデメリット
ポテンシャル採用には多くのメリットがありますが、その反面、以下のようなデメリットもあります。
- 戦力となるまでに時間とコストがかかる
- 見極めが難しい
詳しく見ていきましょう。
戦力となるまでに時間とコストがかかる
ポテンシャル採用は業務の知識や経験がないため、即戦力人材よりも育成を必要とする部分が多くあります。業界の仕組みや専門用語、商慣習などの教育は、新卒とほとんど変わりません。
また社会人経験があるぶん、新卒入社の人材に比べて知識や能力にばらつきがあります。一人ひとりに合わせた教育が必要になるため、教育担当者の手間が増え、教育コストは高くなります。
見極めが難しい
ポテンシャル採用では応募者の潜在的な能力を評価する必要があるため、即戦力の確保を主な目的とした中途採用よりも適性の見極めが困難です。
中途採用で重視されるスキルや経験は、職務経歴や資格などで客観的に把握できます。一方、ポテンシャル採用で重視される考え方や行動の特性などは、目に見えにくい要素です。そのため評価基準や選考方法を明確化しにくく、面接者によって評価にばらつきが生じる可能性があります。
ポテンシャル採用を成功させるコツ
ポテンシャル採用のデメリットは、あらかじめ準備をしておくことで解消が可能です。募集をかける前から採用後まで、ポテンシャル採用を成功させるためのコツを解説します。
必要な能力やマインドを具体的にする
ポテンシャル採用を始める最初の段階で、募集ポジションに必要な能力やマインドを具体的にしましょう。具体化していないと、応募が思うように集まらなかったり、評価基準にばらつきが出たりするおそれがあります。
たとえば「コミュニケーション力が高い」というだけでは、不十分です。これは人によってコミュニケーション力でイメージする内容が異なるためです。
- 初対面の人とも自然な会話で和やかな雰囲気を作ることができる
- 相手に安心感を与え、意見や課題を的確にヒアリングできる
- 利害が相反する相手と交渉できる
- 立場を超えて自分の意見を伝えられる
- 論理的な説明ができる など
「どのような場面で」「誰に対し」「どのようなコミュニケーションを行い」「どのような成果を上げる能力が必要か」をひとつずつ明確にすることで、認識の齟齬をなくし、評価のばらつきを防止できます。
育成体制を整える
ポテンシャル採用では、基本的なビジネスマナーに関する教育は不要ですが、業界や職種特有の知識やスキルの育成は必要です。社内で当たり前に使われている言葉や知識でも「わからなくて当たり前」と考え、根気強く丁寧に育成する体制を整えましょう。
また、ポテンシャル採用で採用した人材が安心して学び、スキルを積める環境をつくることも重要です。未経験業種や職種での業務は、受け入れ側が想定する以上に本人が負荷を感じていることも少なくありません。こまめな面談やメンター制度などを取り入れることで心理的安全性が向上し、人材の定着と成長につながります。
適性とモチベーションを見極める質問を用意する
適性やモチベーションは、職務経歴書や履歴書には現れにくいものです。面接で必要なスキルや資質を深堀りできる質問を用意して、評価の参考にしましょう。たとえば「コミュニケーション能力」を見極めたい場合、以下のような質問が考えられます。
- 複雑な内容を相手にわかりやすく伝える際、どのような工夫をしているか
- 相手と意見が対立したときに、どのように合意形成を図っているか
- チームの中で、どのような役割を担うことが多いか など
これらの質問は、最初のコツで解説した「必要な能力やマインドの具体化」を踏まえて用意すると、より適性を判断しやすくなります。
ほかにも、適性検査は資質やマインドを数値化できるため、判断材料として活用できます。すでに活躍している社員にも検査を受けてもらえば、成果を上げる人材に共通する傾向を把握しやすくなるでしょう。
また、未経験の業界や職種に挑戦する理由や、前向きな姿勢を確認することも重要です。たとえば「前の仕事以外ならなんでもいい」という人よりは、何らかの前向きな理由を持つ人のほうが、成長意欲が高く、将来的な活躍が期待できるでしょう。
カルチャーフィットを重視する
会社にカルチャーフィットする人材は業務に前向きに取り組めるため、高いパフォーマンスが期待できます。たとえ業務への適性や意欲があったとしても、職場になじめなければモチベーションの低下につながるため、採用判断の際は会社のビジョンや雰囲気への共感を特に重視しましょう。
カルチャーフィットする人材からの応募を促すためには、企業風土や社員のリアルな声を伝えることが重要です。SNSや採用サイトを活用し、社内イベントや先輩社員へのインタビューなど、社風が伝わる広報活動を行いましょう。
キャリアビジョンをすり合わせる
ポテンシャル採用は将来の活躍を期待した採用なので、将来像のミスマッチを防ぐことが重要です。応募者が思い描いているキャリアパスと、企業側のビジョンを選考段階で丁寧にすり合わせましょう。
キャリアパスを把握するためには、以下のような質問が考えられます。
- 5年後、10年後はどのようなポジションで活躍したいか
- 会社の事業で特に携わってみたい分野はあるか
- 将来的にどのようなスキルを身に付けたいか など
応募者とのすり合わせでは、会社側が考えているキャリアプランの想定も提示しましょう。応募者は業界未経験であるため、充分なイメージができない部分もあります。相互に意見を交わしながら理解を深めていきましょう。
業界・職種未経験者に合わせた情報を提供する
ポテンシャル採用では、業種や職種の経験がない人でも応募しやすいよう、入社後をイメージできる情報提供が重要です。
【掲載する情報の具体例】
- 仕事中の様子を撮影した写真や動画
- 入社後の教育体制
- 未経験で入社した社員の様子
- 向いている性格や考え方
仕事内容を紹介する際は、文章だけでなく写真や動画を活用することで業務のイメージが伝わります。また、未経験者は業務への不安を抱えやすいため、教育体制や未経験で入社した社員の様子を紹介することで安心感を与えられます。
ハードルを下げるだけでなく、向いている性格や考え方を伝えることも重要です。たとえば「コミュニケーション能力の高い人」ではなく、「初対面の人とでもすぐに打ち解けられる人」など、具体的に伝えることでミスマッチを防げます。
適性やキャリアビジョン、カルチャーマッチを重視したポテンシャル採用には、ビジネスSNSやスカウト機能が充実した媒体が効果的です。ほかにも職種や業界に特化した求人サイトや、利用者の多い大手総合求人サイトなど、ターゲットに合わせた媒体を選定しましょう。
まとめ
ポテンシャル採用は、求職者の経験やスキルではなく潜在能力に着目し、将来的に会社の中核を担える人材を確保する採用手法です。応募を集めやすい一方で、育成に時間がかかり、見極めが難しいというデメリットもあります。
育成を前提とした採用であることを理解し、綿密な準備と丁寧な育成体制を整えることが成功の鍵となります。

この記事を担当した人
PeopleX コンテンツグループ
人事・労務・採用・人材開発・評価・エンプロイーサクセス等についての用語をわかりやすく解説いたします。
これまでに出版レーベル「PeopleX Book」の立ち上げ、書籍『エンプロイーサクセス 社員が成功するための7つの指針』の企画・編集、PeopleX発信のホワイトペーパーの企画・編集などを担当しました。
- 株式会社PeopleXについて
- エンプロイーサクセスHRプラットフォーム「PeopleWork」の開発・運営をはじめとした、新しい時代に適合したHR事業を幅広く展開する総合HRカンパニーです。