PeopleX AI面接に係るAI倫理ガイドライン
1. 目的
当社が提供する対話型AI面接サービス「PeopleX AI面接」(以下「本サービス」といいます。)は、学歴、性別、年齢などの形式的な情報に偏ることなく、コミュニケーション能力など、候補者の本質的な情報に向き合った面接の実現を目指したサービスです。
本サービスは、従来の採用活動が抱える時間的・地理的制約や、時として生じる無意識の偏見(バイアス)といった課題の解決に貢献し、候補者の資質や能力を公平かつ多角的に評価することが可能です。
他方で、「採用」という個人のキャリア形成において重要な場面に関わる技術であるからこそ、当社は、候補者の安心感を確保し、社会からの信頼を得るために、評価プロセスの信頼性及び安全性を継続して確保する社会的責任を負うものと認識しています。
本ガイドラインは、AI面接の健全な発展のために当社が取り組む行動指針を定めるものです。本サービスをご利用される前に、本ガイドラインの内容をよくお読みくださいますよう、お願いいたします。
本ガイドラインにおいて使用される用語の意味は、以下のとおりです。
- 導入企業…AI面接サービスを導入し、採用においてAI面接を利用する企業
- 候補者…導入企業の採用面接を受ける個人
2. 本ガイドラインにおいて重視する指針
本サービスは、個人のキャリアを左右する「採用」という重要なプロセスに関わり、また、候補者の映像や発話といった機微な個人情報を取り扱うという特性を持ちます。そのため、当社は、総務省及び経済産業省が発表した「AI事業者ガイドライン」が示す共通の指針を踏まえつつ、本サービスの特性に鑑み、特に以下のことを大切にしながら本サービスを提供します。
(1)公平性の確保
個人の資質や能力と本質的に関係のない事項(例:性別、本籍・出生地、信条、支持政党等)によって、不公平な採用が行われることがないよう、学習データ及びアルゴリズムにおけるバイアスの検知・軽減に最大限努めます。
(2)プライバシーの保護・セキュリティの確保
面接で取得する映像、音声、発話内容等の個人情報を、個人情報保護法及び関連法令に基づき適法に取得・利用し、候補者のプライバシーを最大限尊重し、セキュリティの確保に努めます。
(3)人間中心の原則
AIによる評価は、あくまで人間の採用判断を支援するための参考情報と位置づけ、最終的な意思決定は人間が行うことを原則とします。また、候補者が機械的なプロセスによって疎外感を感じないよう、人間的な配慮に基づいたサービス設計に努めます。
(4)透明性の確保
AIによる評価プロセスの目的、評価における主要な要素及びAIの能力と限界について、できる限り平易に説明するよう努めます。
(5)アカウンタビリティ(説明責任)
AIによる評価結果及びそのプロセスがもたらす影響について説明責任を負うことを自覚し、導入企業からの問い合わせや懸念に対して、誠実に対応できる体制を整備します。
3. 当社の取り組み
上記「2.本ガイドラインにおいて重視する指針」を具体的に実践するため、当社は、以下の事項を遵守します。
(1)差別的な評価の排除及び人間の介在と最終決定権
厚生労働省が示す「公正な採用選考を目指して」の趣旨を踏まえ、本サービスにおけるAIが以下に挙げるような、候補者の資質や能力と本質的に関係のない事項を判断材料として評価を行うことがないよう、技術的な制御を実装します。その上で、採用担当者などの人間がAIの評価結果を監視し、異常やバイアスの兆候を検知できる仕組みを構築します。これにより、AIによる評価が差別的なものとならないよう、最終的な意思決定は必ず人間が行い、必要に応じてAIの判断を修正できる権限と機能を確保します。
(ア)個人の本質的な能力と関係ない事項
人種・民族、本籍・出生地、住宅状況、性別、性的指向、国籍、社会的身分、障害の有無、家族構成・家庭環境など
(イ)本来個人の自由であるべき事項
思想・信条、宗教、政党思想、社会運動など
(2)法令の遵守
当社は、AI面接サービスを提供するにあたって、職業安定法、男女雇用機会均等法、障害者雇用促進法その他適用のある法令を遵守します。また、当社は、欧州域内への提供において、候補者の感情の認識や推定を行うAI面接は提供しません。
(3)個人情報の適正な収集及び管理
AI面接では、候補者の映像や発話といった機微な個人情報を取り扱うため、以下を実施し、データの適正な収集及び管理を行います。
(ア)データの適正な収集と厳格な管理
面接で取得する映像、音声、発話内容等の個人情報を、個人情報保護法及び関連法令に基づき適法に取得・利用することはもちろん、利用目的の通知、保存期間の設定、削除といった一連のプロセスを管理します。
(イ)セキュリティ対策の徹底
取得したデータを提供事業者が管理する場合、セキュアな保管、厳格なアクセスコントロールを実施します。
(4)公平性の確保に向けた取組み
AIによる評価プロセスが特定の個人や集団に対する不当で有害な偏見や差別をもたらすことがないよう、以下の取り組みを実施します。
なお、当社は、バイアスを完全に排除することは技術的に困難であることを認識し、回避できないバイアスについては、人間の介在により検知・修正を期待できるか否か、あるいはそれが人権や多様な文化を尊重する観点から許容可能か否か評価した上で、サービスの開発・提供を行うよう、努めてまいります。
(ア)データとデータガバナンス
本サービスの学習・検証・テストに用いるデータが、関連性、代表性、正確性、完全性を満たすよう、厳格な管理体制(データガバナンス)を構築します。
①学習データの品質管理とバイアスへの配慮
AIの学習に用いるデータが、性別、本籍・出生地、信条といった属性に偏り、社会的な偏見を増幅させないよう、十分な量及び質の学習用データを用いて開発を行い、かつデータの構成を定期的に評価し、多様性の確保に努めます。
②学習データの適法性確保
開発段階においてAIの学習に用いるデータの取得・利用が、個人情報保護法その他法令に違反しないよう、適切に管理します。
(イ)事前監査及び継続的なリスク管理
開発段階だけでなく、その後も偏見のリスクを継続的に確認し、管理する仕組みを構築します
①リスク管理プロセスの確立
偏見による差別など、起こり得るリスクを特定・分析し、対策を講じるためのリスク管理プロセスを確立し実践します。当該リスク管理プロセスは、定期的に見直しを行います。
②事前監査及び定期監査の実施
開発部門とは独立した機関(AI倫理運営委員会)による事前監査及び一定期間ごとの定期監査を行い、本サービスが公平で安全な基準を満たしているかを確認します。
③フィードバックの活用と改善
導入企業や候補者からのフィードバック(苦情等を含む)を収集・分析し、継続的な改善に繋げてまいります
(ウ)導入企業への透明性
当社がバイアス対策を徹底するだけでなく、導入企業にもリスクをご理解いただき、適切に対策してもらうための情報提供を行います。
取扱説明書の提供
システムの性能や限界、予見されるバイアスのリスクについて記述した取扱説明書を提供し、導入企業が自社の状況に合わせて適切な対策を講じられるよう支援します。
(エ)導入企業によるAI面接実施のサポート
当社は、導入企業によるAI面接の実施をサポートします。
導入企業によるAI面接実施手順の文書化へのサポート
導入企業がAI面接を実施するための手順を策定し文書化するにあたり、導入企業の要請に応じて必要なサポートを提供します。
(5)人間中心の設計及び運用
AIの評価を絶対的なものとせず、人間が介在し監督する体制を構築することで、評価の正確性を期し、候補者の不安を和らげるよう努めます。
人間的な配慮を重視したサービス設計
候補者が機械を相手にすることによる冷たさや疎外感を感じないよう、インターフェースの設計やコミュニケーションのあり方において、人間的な配慮を追求します。
(6)透明性の確保
本サービスにおけるAIによる評価プロセスがブラックボックス化することを防ぎ、可能な範囲で透明性を高めます。
AI利用の告知
AIによる評価が行われることを候補者に告知するよう、導入企業に対し要請するよう努めます。
評価プロセスの説明
AIによる評価プロセスの目的、評価における主要な要素及びAIの能力と限界について、導入企業に対し、可能な限り平易な言葉で説明するよう努めます。
(7)アカウンタビリティ体制の構築
問題が発生した際に、誠実に対応し、説明責任を果たす体制を構築します。
問い合わせ・懸念への対応体制
導入企業からの本サービスに関する問い合わせや懸念に対し、迅速かつ誠実に対応するための問い合わせ窓口を整備します。
(8)導入企業への事前通知
導入企業に対し、上記の内容を事前に通知することで、候補者が安心して本サービスを通じたAI面接に臨める環境を目指します。
