2025.09.22
採用方針の決め方とは?策定手順5ステップと新卒・中途別のポイントを解説
「いい人がいれば採用したい」と考えていませんか?しかし、その漠然とした考え方こそが、採用活動がうまくいかない最大の原因かもしれません。採用は、企業の未来を創る重要な経営戦略です。行き当たりばったりで進めてしまうと、ミスマッチによる早期離職や、採用コストの増大につながってしまいます。
この記事では、採用活動の羅針盤となる「採用方針」の決め方を、誰にでもわかる5つのステップで徹底解説。この記事を最後まで読めば、自社の成長に必要な人材を的確に採用するための、具体的で戦略的な方針を立てられるようになります。
そもそも採用方針とは?採用計画との違いと重要性を解説
採用方針とは、「どんな目的で、どのような人材を、どうやって採用するのか」という、採用活動全体のブレない軸となる考え方のことです。
よく「採用計画」と混同されがちですが、両者は少し違います。
- 採用方針:採用活動の「目的」や「方向性」を示すもの
- 採用計画:採用方針に基づき、「いつまでに、何人、いくらで」採用するかの具体的な「数値目標」や「スケジュール」
つまり、まず「採用方針」という大きな地図があって、その地図を頼りに「採用計画」という具体的なルートを決めていくイメージです。方針がなければ、計画はただの数字の羅列になってしまい、採用活動は迷走してしまうでしょう。
失敗しない採用方針の策定手順5ステップ
戦略的な採用方針は、思いつきではなく、論理的な手順に沿って作るものです。ここでは、誰でも実践できる5つのステップをご紹介します。この通りに進めれば、精度の高い採用方針が完成しますので、ぜひ参考にしてください。
ステップ1:経営・事業計画から採用目標を明確にする
採用は、会社の未来を作るための活動です。
そのため、最初のステップは会社の経営計画や事業計画を深く理解することから始まります。「来期は新規事業を立ち上げる」「3年後までに売上を2倍にする」といった会社の目標に対して、「そのために、どんなスキルや経験を持つ人材が、いつまでに、何人必要なのか?」を考え抜くことが重要です。ここが曖昧だと、採用活動全体の方向性が定まりません。
ステップ2:求める人物像(ペルソナ)を具体化する
次に、ステップ1で明確になった採用目標をもとに、求める人物像(ペルソナ)を具体的に描いていきます。
「コミュニケーション能力が高い人」といった抽象的な言葉ではなく、まるで実在する人物のように詳細に設定することがコツです。
たとえば、「チームの意見をまとめるのが得意で、後輩の育成にも喜びを感じる30代のプロジェクトリーダー」のように、スキルだけでなく、価値観や性格までイメージを膨らませてみましょう。
ステップ3:選考プロセスと評価基準を設定する
ペルソナが固まったら、その人物を見極めるための選考プロセスと、公平な評価基準を設定します。
面接でどんな質問をすれば、ペルソナが持つ能力や価値観を確認できるでしょうか?面接官の主観だけで合否が決まらないよう、「この質問で〇〇のスキルを確認する」といった評価項目を事前に決めておくことが、ミスマッチを防ぐカギとなります。
評価シートを作成し、面接官全員で共有するのがおすすめです。
ステップ4:最適な採用手法・チャネルを選定する
採用したい人物像が決まれば、その人がどこにいるのかを考え、最適なアプローチ方法を選びます。
たとえば、20代の若手エンジニアを探しているなら、大手転職サイトだけでなく、技術者向けのイベントやSNSでの発信が効果的かもしれません。
逆に、管理職候補を探すなら、人材紹介サービス(エージェント)を活用する方が効率的でしょう。ペルソナの行動を想像し、適切な採用チャネルを選定することが大切です。
ステップ5:具体的なスケジュールと予算を計画する
最後のステップとして、採用活動全体のスケジュールと必要な予算を具体的に計画します。
「いつまでに入社してほしいか」というゴールから逆算して、募集開始、選考、内定出しのタイミングを決めましょう。また、求人広告費や人材紹介の手数料など、採用手法ごとにどれくらいのコストがかかるのかを算出し、予算を確保することも忘れてはいけません。
計画的に進めることで、無駄なコストを削減できます。
採用方針の精度を高めるために押さえるべき3つの視点
ただ手順通りに進めるだけでなく、以下の3つの視点を持つことで、採用方針はより戦略的で、成功確率の高いものになります。自社の状況を客観的に見つめ直してみましょう。
視点1:過去の採用活動データから課題と成功要因を分析する
まずは、これまでの採用活動を振り返り、データをもとに成功と失敗の原因を分析しましょう。
どの求人媒体からの応募が多かったのか、どんな人が面接を通過しやすかったのか、入社後に活躍している社員にはどんな共通点があるのか。
過去のデータは、未来の採用を成功させるための貴重なヒントの宝庫です。感覚だけに頼らず、客観的な事実から学びを得ることが重要です。
視点2:自社の採用力(強み・弱み)を客観的に把握する
次に、求職者から見て、自社がどれだけ魅力的に映るか(採用力)を客観的に分析します。
給与や福利厚生、働きやすさ、事業の将来性、社風など、他社と比較したときの自社の「強み」と「弱み」を正直に洗い出してみましょう。
強みはアピールポイントになり、弱みは採用活動で工夫すべき点になります。無理に自分を大きく見せるのではなく、ありのままの姿を理解することが大切です。
視点3:採用市場と競合他社の動向をリサーチする
自分たちのことだけでなく、世の中の採用市場や、ライバルとなる企業がどんな動きをしているかを知ることも不可欠です。
たとえば、同じ職種でも、業界や時期によって給与相場は変動します。競合他社がどのような条件で、どんな人材を募集しているのかをリサーチすることで、自社の募集条件が魅力的かどうかを判断する材料になります。
市場感を把握し、戦略的に立ち回ることが求められます。
【新卒・中途別】採用方針を立てる際のポイント
採用する相手が新卒か中途かによって、採用方針で重視すべきポイントは大きく異なります。
それぞれの特性を理解し、方針を最適化していきましょう。
新卒採用:ポテンシャルと企業文化へのフィット感を重視する
新卒採用では、現時点でのスキルよりも、将来の「伸びしろ」や、会社の「社風(企業文化)に合うか」を重視することが一般的です。
社会人経験がない分、素直さや学習意欲、チームで働く上での協調性など、人柄に関わる部分をしっかり見極める必要があります。「この人と一緒に働きたいか」「数年後、会社の中核を担ってくれそうか」といった視点で評価基準を設定しましょう。
中途採用:事業計画に直結するスキルと即戦力性を定義する
中途採用では、特定の課題を解決するための「即戦力」が求められます。
そのため、「即戦力とは何か」を具体的に定義することが何よりも重要です。「売上を向上させるためのWEBマーケティング経験」や「新しいシステムを導入するためのプロジェクトマネジメント能力」など、事業計画に直結するスキルや実績を明確にしましょう。
期待する役割を具体的に伝えることが、採用後のミスマッチを防ぎます。
自社にマッチする人材を採用するためのヒント
最後に、採用方針をさらに効果的なものにするための2つのヒントをご紹介します。
これらを意識することで、自社に本当にマッチした人材と出会える確率が格段に上がります。
採用ブランディングで企業の魅力を効果的に伝える
採用ブランディングとは、自社を「働きたい」と思ってもらえる魅力的な会社として発信していく活動のことです。いわば、「会社のファンを作る」活動と言えるでしょう。
公式ウェブサイトやSNSで社員の働く様子や企業文化を発信したり、社員インタビュー記事を公開したりすることで、求人情報だけでは伝わらない会社のリアルな魅力を届けられます。
これにより、自社の価値観に共感する人材からの応募が増えるはずです。
スキル要件とタイプ要件を明確に分けてミスマッチを防ぐ
求める人物像を考える際は、「できること(スキル要件)」と「人柄(タイプ要件)」を分けて整理することをおすすめします。
スキルは非常に高いけれど、チームの和を乱してしまう人や、会社の価値観と合わない人を採用してしまうのは、典型的な失敗例です。
両方の要件をバランス良く設定し、面接でもそれぞれの側面から評価することで、スキルも人柄も自社にフィットする理想の人材を見極めることができます。
まとめ:戦略的な採用方針が企業の未来を創る
採用方針の決め方について、具体的なステップから精度を高める視点まで解説してきました。
- 採用方針は、採用活動のブレない軸(コンパス)である
- 策定は、経営計画の理解から始める5ステップで進める
- 過去・自社・市場の3つの視点を持ち、客観的に分析する
- 新卒はポテンシャル、中途は即戦力と、対象に合わせてポイントを変える
- 採用ブランディングや要件の整理で、マッチング精度を高める
明確な採用方針は、単に採用活動を効率化するだけではありません。それは、会社のビジョンを実現し、未来を共に創る仲間を集めるための設計図です。
この記事を参考に、ぜひ自社だけの戦略的な採用方針を策定し、事業を成長させる最高のチーム作りを実現してください。
この記事を担当した人
PeopleX コンテンツグループ
人事・労務・採用・人材開発・評価・エンプロイーサクセス等についての用語をわかりやすく解説いたします。
これまでに出版レーベル「PeopleX Book」の立ち上げ、書籍『エンプロイーサクセス 社員が成功するための7つの指針』の企画・編集、PeopleX発信のホワイトペーパーの企画・編集などを担当しました。
- 株式会社PeopleXについて
- エンプロイーサクセスHRプラットフォーム「PeopleWork」の開発・運営をはじめとした、新しい時代に適合したHR事業を幅広く展開する総合HRカンパニーです。
